東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)263号 判決
一 請求の原因一ないし三は当事者間に争いがない。
二 認定判断の誤り第1点、同第2点について
1 本件審決が、本願考案と引用考案との両者は、アルミ、合成樹脂等の障子紙の貼着がむつかしい材料からなる桟を組込んだ組子を組子枠に装置してなる紙貼り障子である点及び障子紙の貼着がむつかしい材料からなる前記桟の一側面に障子紙の貼着を容易にする物質を別途取付け、その表面に障子紙を貼着した障子である点で共通する旨認定していることは当事者間に争いがない。
また、本願考案及び引用例に開示されている接着剤によれば、アルミと障子紙との貼着はむつかしいということができること並びに本願考案の木製補助桟は障子紙の貼着を容易にする物質ということができることは当事者間に争いがない。
2(一) 更に、いかなる強力な接着剤を用いてもよいとの前提に立てば、合成樹脂製の桟に和紙あるいは合成樹脂薄板を貼着することは容易であること及び従前のでんぷん糊を使用した場合は、合成樹脂製の桟に和紙あるいは合成樹脂薄板を貼着するのは困難であることが、いずれも、引用考案出願当時においても本願考案出願当時においても技術常識であつたことは当事者間に争いがない。
(二) 乙第一号証記載の障子は、組立住宅用障子(乙第一号証一頁2欄三八行目)であり、合成樹脂からなる「桟体背面に障子紙4を貼着せしめることにより障子が形成される」(乙第一号証一頁2欄四行から一一行まで)とされていることは当事者間に争いがない。
成立について当事者間に争いのない乙第一号証によれば、乙第一号証記載の発明に係る障子は桟体をプラスチツクス、即ち、合成樹脂で形成した通常の紙貼り障子であることが認められる。
成立について当事者間に争いのない甲第四号証によれば、昭和五八年第五五三一四号特許出願公告公報(昭和五八年一二月九日公告、昭和五一年六月三〇日出願の名称を「障子戸」とする発明に係るもの)には、室内用障子戸の竪、横の框が金属製の場合、金属に障子紙を貼着せしめるのは困難であり、剥がれ易いので組子は木によつて製造しているが、種々の難点があるので、障子戸の組子を金属製にして強固なものとすると共に、金属製組子に障子紙を貼着する場合に、障子紙が剥がれることがなく、塵や埃が堆積することがなく、さらに結露水が直接障子部材に付着せず、外観体裁が常に良好な室内用障子戸を提供することを目的とする発明として、金属製の組子の一側面に目地部材を取付けることを構成の一部とするものが記載されており、その発明の詳細な説明の欄には、「目地部材5は、ゴム、木材、合成樹脂その他接着剤の付着性の良好な材料からなり、」(甲第四号証一頁2欄二四行から二五行まで)との記載及び「さらに、当接部材をその含有成分によつて親水性に富んだゴムまたは合成樹脂で形成すれば障子部材を紙類で形成すれば、紙類製である障子部材を通常の澱粉糊等で木製の場合と同様に接着したり、または水分で剥したりすることができる。」(甲第四号証二頁3欄二七行から4欄四行まで)との記載があることが認められる。
(三) 他方、乙第二号証(昭和五八年第一三八六四三号公開特許公報、昭和五八年八月一七日公開、昭和五七年二月一三日出願の、名称を「非木質材表面への紙貼り加工方法」とする発明に係るもの)には、「室内建具は骨組材としてアルミニウム合金製又は合成樹脂製押出形材から成る非木質の構造材を用いる傾向にあるが、このような構造材に障子紙を貼るにあたつて通常用いられる澱粉質の糊を用いても、この糊が構造材になじまないために、その乾燥硬化時に剥離してしまう」(乙第二号証一頁右下欄八行から一四行まで)との記載があること、及び、乙第三号証(昭和五九年第一九二三六号特許出願公告公報、昭和五九年五月四日公告、昭和五四年九月二一日出願の、名称を「障子用組子とその製造方法」とする発明に係るもの)には、「近年、竪・横の框をアルミ等の金属製あるいは硬質合成樹脂とした強固な障子が多用されてきており、それに伴い組子も、同様に、金属製あるいは硬質合成樹脂製としたものが使用されてきている。ところが、一般に障子紙は、張り替えを考慮してデン粉糊で組子表面に貼着しているため、組子を金属製あるいは硬質合成樹脂製とした場合、障子としては強固なものとなるが、障子紙の貼着が困難となる欠点が生じる。」(乙第三号証一頁2欄一行から九行まで)という記載があることは当事者間に争いがない。
(四) 右事実によれば、合成樹脂製の障子桟に和紙を貼着することが容易か否かは、一義的にいうことはできず、どのような接着剤を使用するかによつても異なり、甲第四号証、乙第一号証ないし乙第三号証のような特許出願公告、公開特許公報においても、これを容易とするものも困難とするものもあり、その評価は相対的なものであると認められる。したがつて、引用考案が、合成樹脂と障子紙との貼着がむつかしいということを前提としていたか否かは、当然の事ながら、引用例の記載に基づいて検討すべきものである。
3 よつて、更に検討するに、次の事実は当事者間に争いがない。
(一) 接着とは、二つの被着材料が接着剤によつて結合されることであること。
(二) 引用考案の場合、<1>貼着資材である和紙、合成樹脂薄板と<2>合成樹脂製桟に充填剤を充填しその表面を微細粗面としたものとの二つの被着材料が、接着剤によつて結合される結果、「貼着資材が障子枠9または組子桟7から剥離するおそれが極めて少ない効果がある。」(甲第三号証二頁4欄二行から三行まで)ものであること。
(三) 右引用考案が前提とする接着剤とは、あらゆる接着剤をいうものではなく、いわゆる障子用の接着剤であり、貼着資材である和紙、合成樹脂薄板との接着が過不足なく行え、障子の張り替えに当たつて、水で剥がすことのできる程度の接着力を有するものを指すものであること。
(四) そのような接着剤としては、例えば、酢酸ビニルエマルジヨン又は酢酸ビニルエマルジヨンと純粋のでんぷん糊を混合したものがあり、酢酸ビニルエマルジヨンは障子紙用の接着剤として特別のものでなく、戦後間もなくの頃から現在に至るまで使用されているごく普通の接着剤で、一般に化学のりと呼ばれているものであること。
4(一) 成立について当事者間に争いのない甲第三号証(引用例)によれば、引用例の考案の詳細な説明の欄には、次のとおりの記載があることが認められる。
(1) この考案は、任意角度を有する曲条の組子桟を任意所要の個所に組子して種々形状の模様体の変形状組子桟を構成し、貼着用資材の貼着に際し、接着剤の接着を強固になして貼着資材の剥離するおそれのない曲条組子桟障子の考案を目的としたものである(甲第三号証一頁1欄一六行から二一行まで)。
(2) 従来、桟体を組合わせ硝子用に用いる格子戸は種々のものが周知されている。例えば、図面第4図のようにアルミ金属製にて…(中略)…等であるが、いずれも並行状に縦と横とに組み合わせるか、あるいは並行状に帯状とした格子体を形成し、硝子用の格子戸を目的としたものにして貼着用の接着剤を介在し貼着用資材の合成樹脂薄板または和紙等を貼着して障子用に供することは滑面の金属製桟体のために貼着用には不適当であり、本考案は、これらの硝子用とした格子体とは異なるものである(甲第三号証一頁1欄二二行から2欄五行まで)。
(3) 本考案は合成樹脂製にて任意角度の曲条に成型した、条溝1を有する断面U字形の桟2を適宜所要の長さに寸断した桟2の両端の条溝1に曲条に合致した、栓体4の基部を接着剤を介在して嵌着し、一端に設けた円杆状の組子栓5を外側に突出なし、接着剤を混入した植物質または鉱物質の微細粒子状の充填剤にて条溝1に充填6して該表面を微細粗面状となし、貼着用資材を接着する接着剤の塗着を密にするようになし、該条溝1の両側壁の所要個所に設けた複数の各凹所3に充填剤を介入させ条溝1に係止め状として一体的に密着せしめ、条溝1より充填6の離脱することを防止しU字形の桟2を補強して耐久性とした曲条の組子桟7を形成(甲第三号証一頁2欄二〇行から三三行まで)する。
(4) この変形組子桟の障子枠9の内周端縁と組子桟7の表側端縁および、充填6の微細粗面の表面とに貼着用の接着剤を塗着し、貼着用資材例えばワーロンシート(登録商標)または和紙或はその他の貼着用資材を貼着するものである(甲第三号証二頁3欄三行から七行まで)。
(5) 本考案は…(中略)…種々の変形した形状の組子模様の障子桟が得られて美感を呈するものにして、桟2の条溝1に充填剤を充填6にて桟2の凹所3を介し、芯体を一体として形成した組子桟7であるために、自然に来す変化で、組子桟にそりを生ずるおそれを去り充填6の微細粗面であるがために、貼着用資材の貼着に際し接着剤が該微細粗面に介入し接着を強固になし得られる従つて、貼着資材が障子枠9または組子桟7から剥離するおそれが極めて少ない効果がある(甲第三号証二頁3欄八行から4欄四行まで)。
(二) 右(一)の(5)及び前記3の(一)ないし(四)の事実によれば、引用例においては、右3の(三)(四)記載のような接着剤を使用することを前提に、引用考案の効果として、「貼着資材が障子枠9または組子桟7から剥離するおそれが極めて少ない効果がある。」ものとされているところ、それは、<1>貼着資材である和紙、合成樹脂薄板と<2>合成樹脂製桟に充填剤を充填しその表面を微細粗面としたものとの二つの被着材料が、その接着剤によつて結合される結果であるから、その接着剤と和紙、その接着剤と合成樹脂薄板、その接着剤と合成樹脂製桟に充填剤を充填しその表面を微細粗面としたものとの結合はいずれも容易であることが前提とされていることは自明である。
そうすると、引用例には、その前提とする接着剤と和紙との結合は勿論、その接着剤と合成樹脂薄板の材料である合成樹脂との結合も容易であることが開示されているものと認められる。
(三) 引用例には、金属製桟体が滑面であるために貼着用には不適当である旨の記載(甲第三号証一頁2欄三行目)があるけれども、合成樹脂製の桟が、貼着用資材の貼着がむつかしい旨の記載はなく、むしろ、貼着用資材を組子桟7の表側端縁にも貼着用の接着剤を塗着し、貼着用資材を貼着するものとされている(甲第三号証二頁3欄三行から七行まで)ことは当事者間に争いがない。
また、前記(一)の(1)及び(2)の引用例の考案の詳細な説明の欄の記載によれば、引用例においては、従来技術の問題点として、前記(一)の(2)のように、金属製の格子戸は、並行状に縦と横とに組み合わせるか、あるいは並行状に帯状とした格子体を形成し、硝子用の格子戸を目的としたものであつて、合成樹脂薄板または和紙等を貼着して障子用に供することは滑面の金属製桟体のために貼着用には不適当であることを上げ、これに対応する引用考案の目的として、前記(一)の(1)のとおり、任意角度を有する曲条の組子桟を任意所要の個所に組子して種々形状の模様体の変形状組子桟を構成し、貼着用資材の貼着に際し、接着剤の接着を強固になして貼着資材の剥離するおそれのない曲条組子桟障子を得ることを上げているのであつて、引用考案に対する従来技術の問題点及び引用考案の目的としても、合成樹脂製の桟への貼着用資材の貼着の困難性の指摘及びその解決は記載されてなく、示唆されてもいないことは明らかである。
更に、前記(一)の(3)ないし(5)の引用例の考案の詳細な説明の欄の記載によれば、引用例においては、引用考案の構成についての説明として、前記(一)の(3)のとおり、接着剤を混入した植物質または鉱物質の微細粒子状の充填剤で条溝1に充填してその表面を微細粗面状となし、貼着用資材を接着する接着剤の塗着を密にするようになし、充填剤を条溝1に一体的に密着させてU字形の桟2を補強して耐久性とした曲条の組子桟7を形成すること、前記(一)の(4)のとおり、変形組子桟の障子枠9の内周端縁と組子桟7の表側端縁及び充填6の微細粗面の表面とに貼着用の接着剤を塗着し、ワーロンシート又は和紙或はその他の貼着用資材を貼着すること、とされ、引用考案の効果として、前記(一)の(5)のように、種々の変形した形状の組子模様の障子桟が得られて美感を呈すること、桟2の条溝1に充填剤を充填し芯体を一体として形成した組子桟7であるために、自然に来す変化で、組子桟にそりを生ずるおそれがないこと、充填6の表面が微細粗面であるために、貼着用資材の貼着に際し接着剤が該微細粗面に介入し接着を強固になし得られ、貼着資材が障子枠9または組子桟7から剥離するおそれが極めて少ないことが上げられている。
しかし、これらの、引用考案の構成及び引用考案の効果についての記載中にも、微細粒子状の充填剤を条溝1に充填してその表面を微細粗面状とするのは合成樹脂製の桟への貼着用資材の貼着が困難であり、それを解決するためであるとする記載も、その示唆も認められない。
むしろ、前記の引用考案の構成及び引用考案の効果についての記載中からは、種々の変形した形状の組子模様の障子桟を得て美感を呈するための合成樹脂製の組子桟に、自然に来す変化でそりを生ずるおそれがないように充填剤を充填して補強するものとし、その充填に貼着材を貼着する以上、その表面を微細粗面として貼着用資材の貼着に際し接着剤が該微細粗面に介入し接着を強固にできるようにした結果、引用考案は、前記の効果を奏するものであることがうかがわれる。
(四) 以上によれば、引用例が前提としている接着剤によれば、合成樹脂と障子紙との貼着はむつかしいとはいえず、引用考案は、障子紙の貼着がむつかしい合成樹脂製の桟を組み込んだ組子を組子枠に装置してなる紙貼り障子ではなく、引用考案には、障子紙の貼着がむつかしい合成樹脂製の障子桟に貼着を容易にする物質を別途取り付けるという技術思想はなく、引用考案の充填材は、障子紙の貼着を容易にする物質といえないと認められる。
5(一) 被告は、引用例には、貼着用資材に合成樹脂薄板を用いることも記載されているが、合成樹脂薄板を貼着するものは、本願考案のように障子紙を糊で貼着するようないわゆる紙張り障子とは異質の、障子紙の張り替えを前提としない建具というべきものであるから、合成樹脂薄板の貼着に適当な特殊接着剤を使用するとしても、そのような実施例は本件審決で引用するところではないと主張する。
しかし、前記甲第三号証によれば、引用例には、貼着用資材が和紙の場合と合成樹脂薄板の場合とでは張り替えの有無で異なることを示す記載は一切なく、むしろ、前記4(一)の(1)ないし(5)のとおり、「貼着用資材」、「貼着用資材の合成樹脂薄板または和紙等」又は「貼着用資材例えばワーロンシート(登録商標)または和紙或はその他の貼着用資材」というように、和紙とそれ以外の貼着用資材とを一括して説明されているのであつて、引用考案が、貼着資材が和紙の場合と合成樹脂薄板の場合とで用法や技術思想が異なり、異質の建具となることは記載されていない。本件審決が合成樹脂薄板を貼着する場合を引用していないとしても、引用考案の技術思想を認定するに当たつて、貼着資材として合成樹脂薄板を使用する場合をも含めて検討することは当然であり、被告の主張は失当である。
(二) 被告は、前記2(三)の乙第二号証及び乙第三号証の記載からも、本件審決の「両者は、アルミ、合成樹脂等の障子紙の貼着がむつかしい桟」との認定判断が誤りでないことは明らかであると主張する。
しかし、乙第二号証、乙第三号証は、いずれもでんぷん糊を用いることを前提としていることは、前記2(三)から明らかであるのに対し、引用考案が前提とする接着剤は、貼着資材である和紙、合成樹脂薄板との接着が過不足なく行え、障子の張り替えに当たつて、水で剥がすことのできる程度の接着力を有するものを指すものであり、例えば、酢酸ビニルエマルジヨン又は酢酸ビニルエマルジヨンと純粋のでんぷん糊を混合したものであることが当事者間に争いがないことは前記3(三)(四)のとおりである。また、前記2(二)のとおり、乙第一号証には、組立住宅用障子の合成樹脂からなる「桟体背面に障子紙4を貼着せしめることにより障子が形成される」とされ、甲第四号証には、「目地部材5は、ゴム、木材、合成樹脂その他接着剤の付着性の良好な材料からなり、」との記載があることが認められ、乙第二号証、乙第三号証の記載から直ちに、引用例において合成樹脂の桟が障子紙の貼着がむつかしいとされていることはできず、被告の主張は認められない。
被告は、乙第一号証及び甲第四号証の記載は通常の合成樹脂と障子紙の貼着が容易であることを示すものとはいえない旨主張するが、乙第一号証には合成樹脂からなる「桟体背面に障子紙4を貼着せしめることにより障子が形成される」とされていること及び通常の紙貼り障子に属するものであることは前記2(二)のとおりであり、成立について当事者間に争いのない甲第四号証によれば、甲第四号証においては、合成樹脂は接着剤の付着性の良好なものとされており、さらに含有成分によつて親水性に富んだ合成樹脂は、紙類製である障子部材を通常の澱粉糊等で木製の場合と同様に接着したり、または水分で剥したりすることができるとされているものであることが認められるから、被告の主張は理由がない。
(三) 被告は、酢酸ビニル樹脂エマルジヨン又は酢酸ビニル樹脂エマルジヨンとでんぷん糊を混合したものである化学糊と呼ばれる障子用の接着剤を用いても、合成樹脂製桟と和紙の接着には、純粋のでんぷん糊と同様の問題が生ずるものと考えられることは、化学糊が一般に用いられるようになつてからも、引用例や乙第二号証に記載されているような、合成樹脂製の桟に対する紙の接着性を改良するための発明、考案が種々なされていることからも明らかである旨主張する。
しかし、引用例には、合成樹脂製の桟に対する紙の接着性を改良するという目的が記載されていないことは、前記のとおりであり、乙第二号証はでんぷん糊の使用を前提としているものであることは前記2(三)のとおりであるから、被告の右主張は採用できない。
(四) 本願明細書の考案の詳細な説明の欄に、本願考案の解決しようとする問題点として、従来技術の「金属製障子においては、組子を構成している竪桟と横桟が共に金属製で吸水性が全くなく、しかも竪桟と横桟の交差部を固定する連結材も、吸水性のない合成樹脂が用いられているため、組子に障子紙を貼着した当初は問題ないが、日数が経過するに従つて障子紙が剥がれてくる欠点があつた。」(甲第二号証一頁1欄一七行から二三行まで)との記載があることは当事者間に争いがない。この記載によれば、本願明細書も、吸水性のない合成樹脂も障子紙の貼着がむつかしい材料であることを前提としているかのようである。
しかし、本願明細書の記載から、引用例が合成樹脂製の桟が障子紙の貼着がむつかしいことを前提としていたか否かを認定するのは相当ではない上、右本願明細書の記載は、金属製の障子が結露しやすい性状を有し、吸水性がなく、しかも連結材の合成樹脂も吸水性がないため、結露した水を内部に吸収し得ず障子紙が剥がれてくることをいうものであること及び金属製の障子が結露しやすい性状を有することも当事者間に争いがないから、合成樹脂のみからなる桟の場合、吸水性がないことから直ちに障子紙の貼着がむつかしいものとはいえず、本願明細書が、合成樹脂を障子紙の貼着がむつかしい材料であることを前提としているものとはいえない。
6 以上のとおりであるから、本件審決の、本願考案と引用考案との両者は、アルミ、合成樹脂等の障子紙の貼着がむつかしい材料からなる桟を組込んだ組子を組子枠に装置してなる紙貼り障子である点で共通する旨の認定及び本願考案と引用考案との両者は、障子紙の貼着がむつかしい材料からなる前記桟の一側面に障子紙の貼着を容易にする物質を別途取付け、その表面に障子紙を貼着した障子である点で共通する旨の認定はいずれも事実認定を誤つたものであり、その誤つた事実認定に基づいて、本願考案は、引用考案及び従来周知の事実に基づいて当業技術者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるとした本件審決の認定判断は違法なものである。
四 よつて、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は理由があるから認容することとする。
〔編注1〕本願考案の要旨は左のとおりである。
竪桟2と横桟5を井桁状に組込んだ組子1を組子枠に装着して成る紙貼り障子において、アルミ押出型材からなる桟の一側面に木製補助桟8を取付けるとともに、該補助桟の表面に障子紙9を貼着したことを特徴とする金属製障子。
(本願考案につき、別紙本願考案図面参照。)
〔編注2〕本件における図面は左のとおりである。
別紙 本願考案図面
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(以下省略)